図3a(左) 普遍的な様式。水玉は個々の芸術家。それぞれの芸術家は理想的な様式という一元的な価値を共有している。
図3b(右) 個人様式。様式は個々の芸術家とその作品の差異として理解される。一つの価値基準となった「個人様式」
現代でも一般に音楽史は作曲家とその作品を中心に語られますが、これは「個人様式」という価値でそれぞれの時代の特徴を説明しようとする傾向があるからです。もちろん、歴史を書くには一定の視点や基準は必要です。しかし、歴史の読み手としての私たちは、「独創性」を重視する近代的な価値観を19世紀以前の音楽に遡及して適用させたり、そのような価値の枠組みの外で音楽活動を展開した音楽家に適用させることによって一面的な評価に陥らないよう十分注意しなくてはなりません。私は、研究や音楽批評に携わる人が積極的にオピニオン・リーダーとなって、一般の音楽の聴き手に様々な視点で過去の音楽と向き合う方法を提示することが大切だと思います。そして、様々な音楽を楽しく共有できるような企画をしていくこともまた大切だと思います。私自身はまだそのような役目を担っているというには十分な活動ができているとは思いませんが、できる限り貢献していこうと思います。
- E. Littré, Le dictionnaire de la langue française, Tome 4, (Paris : Librairie Hachette et Cie, 1874), p. 482.
- A.-F. Marmontel, Art classique et moderne du piano, conseil d'un professeur sur l'enseignement technique et l'esthétique du piano, (Paris : Heugel et Cie, 1886), p. 90.