「サロン」と聞いて、どのような場所を思い浮かべますか?
19世紀のパリでは、貴族や裕福な市民の邸宅で開かれる芸術家や文化人の集いが「サロン」と呼ばれていました。音楽を中心にしたサロンもあり、とくにピアノは「サロンの必需品」と言われたほどです。そこは若い音楽家たちが才能を披露し、評価を得る重要な舞台でした。ショパンやリストも、サロンでの活躍を重ねて音楽界での地位を築いていきました。音楽家と聴衆が親密に交流し、新しい音楽文化が育まれる場—それがサロンの本質でした。現代の日本でも、多くの音楽家や愛好家が自宅や専用の空間で「サロン」を開き、コンサートや勉強会を通じて音楽文化を支えています。歴史あるサロン文化は、形を変えながら今も私たちの身近な場所で息づいています。
現代に息づくサロン文化
ショパンやリストが活躍した19世紀のサロンと同様に、日本でもそのような文化が花開いた時代がありました(例:資生堂ギャラリー~関連記事:福原和人さんインタビュー)。そして現代の日本。ピティナ会員の方々も自宅や専用施設でサロンを運営されており、音楽文化の継承、発展に力を尽くされています。
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コンサートサロン・レゾナンス 千葉県市川市/根津栄子先生2014年12月14日
40名
スタインウェイ B型
毎月1〜2回
「レゾナンス(共鳴、響き)」という名前が表すように、響きがあり、観客と演奏者とが感動を分かち合える空間を作るため、天井を5.2mと高くしています。全ての客席から手元が見えるようプロジェクターを活用しています。これまでの10年間で、コンサート20回、セミナー33回、勉強会56回と合計109回のイベントを開催してきました。
2015年
50名
スタインウェイB型マホガニー
コンサート、公開レッスン、ステップ
「100年位前、大広間において仲間と一緒に演奏した、その時の一室をちょっとのぞいてみたい!」という想いで、自宅にサロンを作りました。各楽器の響きが最もよくなるように、施工段階から試演し調整しました。イギリスの建物やアンティークが好きで、サロンも洋館のような雰囲気を再現し、内装も全てイギリスとイタリアのアンティークで揃えています。
2016年
45〜60名
べーゼンドルファーmodel214/スタインウェイA型
コンサート、公開レッスン、ステップ
2011年に被災した福島県浪江町から移住し、東京の高額な会場費と抽選の実態に直面。教え子たちが演奏する場を作ってあげたいというのが、一番の願いでした。ヨーロッパの街並みにあるような総レンガ造りの外観と、ヨーロッパ調の家具やステンドグラスなどインテリアにもこだわり、音響も雰囲気もよい環境づくりを心掛けました。
中部
畳のサロン「夢慈歌」 山梨県山梨市/小林菊子先生2021年
50名
スタインウェイM(2025年まで)、ヤマハC5(2026年〜)
自主企画、貸し出し(2026年春より予定)
600坪の日本庭園を有する築150年を超える古民家を改築し、自然豊かな静かな場所で、地域の方にも音楽を楽しんでいただけるよう、畳敷きのサロンをつくりました。標高850mの涼しい山の中にあり、外からは鳥のさえずりや水の音が聞こえる「和」の空間で、心穏やかに音楽に浸っていただけます。
ピアノホールF 愛知県高浜市/深谷直仁先生2012年
50~70名
スタインウェイ D-274
所有していたスタインウェイのフルコンサートピアノを、狭い練習室に埋もれさせるよりは広い空間で皆さんに活用していただきたいと思い、サロンをつくりました。地元・愛知県産の杉の木を使った木造で、最高部の高さは6m以上あります。ピアノや室内楽の個人練習やリハーサルで月の半数以上が貸し出し利用されています。
近畿
アトリヱ・松田 京都府京都市/松田紗依先生2006年(建物は1936年)
45〜60名
スタインウェイB型
彫刻家であった故祖父・松田尚之が1936年に建てたアトリヱで、2018年、京都市の事業「京都市民が選ぶ京都を彩る建物や庭園」に選ばれました。天井8メートル、漆喰の壁、木造建築のこの空間で奏でるピアノの音色は、まろやかに響き、そして芯があり、色彩やニュアンスの違いをはっきり浮き立たせてくれます。
2006年
80名
スタインウェイB-211
月5回程度
室内楽や歌を学べる、大人の集まれるサロンがあればいいなと思い、自宅医院開業の際に2階に80席のホールを作りました。ステージ側から見ると上方の窓から青空が見え、特に歌い手さんや管弦の奏者から気持ちが良いと喜ばれています。室内楽コンサートや公開レッスン、ステップやコンクールにも活用しています。
奈良県葛城市/岡田一美先生
2002年秋
50名
スタインウェイ(ハンブルグ)B-211、ボストンピアノGP-178
イギリスのコッツウォルズでの滞在を参考に、庭を眺めてティータイムを楽しめる部屋(コンサバトリー)を作りました。中央に螺旋階段があり、天井が7メートルの吹き抜けのホールとコンサバトリーが繋がっています。音楽家をテーマにした料理や書、絵画と音楽とのコラボ、若手支援の合宿やコンサートも開催してきました。
中国・四国
プルニエサロン 岡山県岡山市/内藤みゆき様2011年
30〜40名
YAMAHA S6X
地方には、大人が安心して音楽を楽しめる場所が限られているため、「大人の趣味は本気で!」と意を決し、世界でたった一つの音の空間を、愛する故郷岡山の地で作ることにしました。大きなホールでは得られない親密さがあり、アンサンブル練習や勉強会、世代やジャンルを超えた仲間と音楽を分かち合うなか、新たなご縁が生まれています。
ピティナが提案する新しい「サロン」の形
19世紀のサロンが音楽家と聴衆の親密な交流の場であったように、ピティナでも現代に合った形で「サロン」の精神を受け継ぐイベントを開催しています。
サロン型ステップサロン型ステップは、通常のステップに比べて少人数で開催され、質疑応答や講評の時間を充分に確保し、アドバイザーと参加者一人ひとりとの交流を重視するイベントです。楽器店の音楽サロンや客席数50程度の会場など、客席と舞台が近い場所で実施され、演奏後には参加者からの質問にアドバイザーが個別に答える時間が設けられています。
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グランミューズ・サロン
グランミューズ・サロンは、15歳以上の愛好家やアマチュアが集うピアノの弾き合い会です。参加者同士が互いに質問し合いながら、楽曲、演奏、そして音楽全般について楽しく語らい合います。ピアニストが演奏について助言したり、時には自身も演奏を披露することもあります。手軽に持ち運びできる時代だからこそ、ある「場所」に生身の人が集まって楽しく学ぶ新しい大人の交流の場として、ピアニストが新しいコミュニティ作りを目指しています。
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まとめ
19世紀のパリで花開いたサロン文化—音楽家と聴衆が親密に交流し、新しい音楽文化が生まれる場—は、現代の日本でも確実に受け継がれています。プライベートな空間での温かな音楽交流、演奏者と聴衆の近い距離感、そして音楽を通じた人と人とのつながり。これらはまさに「サロン」の本質そのものです。
ピティナ会員が運営する各地のサロンと、「サロン型ステップ」「グランミューズ・サロン」といった新しい取り組みを通じて、この歴史あるサロン文化がこれからも多くの音楽愛好家に愛され続けることでしょう。関連リンク グランミューズ ピティナ会員登録のご案内