Category XX「Spirit」
このカテゴリーでは妖精や小人、神霊をひとまとめにした。これらもピアノ音楽の中では無視できないテーマであり、当然人間とは異質の、それでいて生命感溢れる表現が求められることになる。だがこうした題材は花や昆虫以上に創意が必要とされる。漫画のようになってしまい易いからだ。特に19世紀のピアノ音楽で現在するのはリストの「小人の踊り」ほか僅かな例しかない。
子供用に書かれたとみられる、エステンを除いて、他の3名はリスト同様、極めて高度なピアニズムを用いてそれらを写し出している。子供の発表会などで誰もが知る「人形の夢とめざめ」。しかし、その作曲者テオドール・エステン(1813-1870)についてはほとんど知られていない。彼が生涯に書いた初心者・愛好家向けピアノ曲は1000曲にのぼるとみられる。かの「人形」が象徴するように、彼の作品はどれも人形の如く表情に変化がなく、紙芝居のように平面的に見える。その異様さが一種の魅力につながっている。バレエ・シーン「水の精と地の精」は典型的な例であろう。
Th.Oesten:Ondines et Gnomes, Scène de Ballet Op.211 ト長調-ト短調 pf:Osamu N. Kanazawa(録音:2017/4/3)