Category XIX「泉 Fountain」

Fontaine=フォンテーヌは泉・噴水を指す言葉であり、この2つの異なる事象を一括りにする謂われは、湧き上る水のイメージにあるのだろう。情感とは別の、こうした即物的な描写、質感はドビュッシーやラヴェルに先立つ時代にあって、どのように表現されていたのだろうか。

ここでの4名の作曲家たちは、いずれも長調で、メロディを支える伴奏のフィギュレーションを水の流れに模している。とはいえ、テンポ感、表情はまちまちで、各人の個性が鮮やかに描き分けられている。

なお、リストの有名な「エステ荘の噴水」は、原題が「水の戯れ」であって、これを「噴水」と訳すのは無理があるように思う。


ヴィオラ奏者として高名だったベルトルド・ダムケ(1812-1875)の約60点の作品のうち、ほぼ半数がピアノ曲で占められる。ピアニスティックにこなれたピアニストとしての技倆が伝わる内容だが、巧みな対位法、やや控え目な音感は明らかにヴィオラの音色と重なるものがある。Op.8は「2つの性格的小品」と題され、「泉」はその第1曲。

B.Damcke:La Fontaine Op.8-1 ホ長調 pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2017/2/20)