Category XI 「行進曲 March」

「行進曲」は元来、軍隊と結びついており、戦意・国威の発揚を前提としたものが多い。結婚や葬送を含め、基本的にはセレモニーのための音楽といえるだろう。従って純粋な「芸術的行進曲」のウェイトは限られる。

ピアノ曲のジャンルでマーチが流行するのは比較的遅く、1840年代から'60年代にかけての時期とみられる。1848年の革命が象徴するように、民衆の士気が高まり、サロン的優雅さから勇壮さへと時代のモードが切り替わってゆく。

こうした世相を映し出す行進曲から特徴的な作品を並べてみた。これらの曲が書かれた当時、日本は幕末期にあり、時代の空気は洋の東西を問わず、連動していたことを窺わせる。


パリという都会の中で閉鎖的な生涯を送ったシャルル・ヴァランタン・アルカン(1813-1888)は、古典への憧憬と革新的発想を両軸に、ピアノ音楽の新境地を切り開いた。衝撃的なタイトルや彼自身の生き様から「闇」のイメージでとらえられがちだが、これ程輝かしく、ポップな感性を持った音楽も珍しい。「3つの行進曲~騎兵隊風に」Op.37は、明快でタイトな音感が赤裸々にアルカンの本質を表わしている。

Ch.V.アルカン:「3つの行進曲」Op.37より 第3番 ハ短調 Ch.V.Alkan:Trois marches Quasi da Cavalleria Op.37 pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2016/10/9)