皆様、ゴールデンウィークはどのようにお過ごしでしたか。「課題曲チャレンジ」へのエントリーを決めて、いつもより多めにピアノの練習をした方も多かったかもしれません。こちらはピアノ、ひいては音楽を心から楽しむため、ぜひ「ピティナ・ピアノ曲事典」を活用していただきたい、というおススメ記事です。

課題曲チャレンジ 詳細 目次 [◆ ピアノ曲事典から見る「課題曲チャレンジ」の課題曲](#part2)

演奏動画

◆ 大充実の解説文

課題曲チャレンジで皆さんが演奏するのは、2020年度ピティナ・ピアノコンペティションA2級からF級までの指定課題曲です。例年、いくつかの級に跨って課題曲指定されているバッハや古典派のソナタ、ショパンのエチュードなどを除く今年度特有の課題曲にはほとんど、解説文を付けました。ぜひピアノ曲事典上で読んでみてください。

◆若いピアニストたちの演奏動画

3月末の特集記事「 おうちで課題曲聴き比べ」では、級ごと期ごとに演奏を並べた再生リストを使えるようになっていますから、お目当ての曲を簡単に聴き比べられます。ここで視聴できる動画も、すべてピアノ曲事典に収録してあります。解説文を読みつつ聴きなおし、弾きなおしをしたら、曲の見え方(聴き方)が変わるはず。ぜひ目と耳、頭も使って、曲に詳しくなってみてください。

◆音楽の見方を広げてみよう~関連曲を聴くというおススメ~

「4曲名人」という言葉をご存じですか。3月1日の課題曲発表から8月末の決勝大会まで半年近くの期間、コンペティションに向けた練習だけを重ねて、課題曲は見事に弾けるけれども、楽譜を読む力も応用力も身につかないことがあるのではないか、という批判的な指摘の言葉です。しかし4曲を見事に仕上げることだって立派なことですから、そんな言葉を気にせず、大いに4曲を練習していただきたいと思います。でも、他の音楽を聴いたり、ちょっと弾いてみることで、今練習している曲の別の面が見えることがあります。「寄り道だと思っていたら、実は近道だった」ということがあるかもしれません。『課題曲をとりまく作品を聴こう!』ページもぜひご一読ください。

◆ピアノ曲事典と課題曲チャレンジ ~皆さんへの応援メッセージ~ 本多昌子先生(課題曲選定委員長)

~今年だからできること~

長い時間と手間をかけて決められるコンペティション課題曲にはピアノ指導者の知見と心配りが詰まっています。課題曲選定委員長の本多先生に、2020年度課題曲の選曲テーマや、その取り組み方をうかがいます。

2020年のピティナコンペティションは、お家での動画投稿によるチャレンジ企画となりましたね。一度は「幻の課題曲」になる運命とも思われましたが、こうして再び皆さんの手元に戻り、生きた音となることを楽しみにしています。

今年はベートーヴェン生誕250年ということもあり、世の中はベートーヴェンのコンサートで溢れるはずでした。課題曲の中にもB級C級に(もちろんD,E,F級にも!)ベートーヴェンの曲が選曲されています。記念すべき年に偉大な作曲家ベートーヴェンの曲にも、触れて頂けたらと思います。
できれば課題曲のみ、そしてピアノ曲のみならず、オーケストラや室内楽も是非聴いて頂きたい。ベートーヴェン時代の楽器の音源聴くことができます。ピアノで奏でるときの音のイメージはより膨らむでしょう。

そして、是非ピアノ曲事典のサイトを活用して下さい!

皆さんが選んだ曲の作曲家はどんな人?どんな時代を生きた人?この曲が生まれた背景は?他にどんな曲を作曲している?多くのことを知ればその作品が身近に感じられ、豊かな表現に繋がります。

知る喜びと感じる喜び、そして表現する喜び、たくさんの喜びを手にして頂けたら嬉しいです。

赤松林太郎先生(ピアニスト)

~深めることと広げること~

ピアノ曲事典に最も多くの音源を載せている一方、ピティナ・ピアノコンペティションはじめコンクール指導者としても絶大な信頼を集める赤松先生。「音楽の世界の歩き方」をおうかがいします。

まず4曲を演奏するということの価値をあらためて強調しておきたいと思います。

自分の好みに関わらず、「四期」に基づいて音楽史の全体像を知ることは、若いピアニストにとって良い仕組みですね。

全体像は地図のようなイメージです。最初は大雑把なものだったのが、毎年チャレンジし続けることで、次第に縮尺の大きな地図が書けるようになってくる。

そんなチャレンジを進める上ではぜひ、ある作曲家のことを「知りたい」と思う気持ちを持っていただきたいです。そうしてまずは同じ作曲家の様々な曲を知ること。そして、同時代の曲も知っていただきたいです。

寄り道しないと新しい発見はありません。「その一曲」をしっかり読むのはもちろん大切ですが、他の人がその曲をどう見ているか、どう表現しているかを知ることも大切です。たくさんの「点」を持ってください。それらを組み合わせることで、新たな「線」をひくことができるようになります。

ある曲を弾いていて、「このフレーズは聞いたことがある」という瞬間があります。「ブラームスのこの曲のこの部分はもしかして平均律のあの部分かな?」といったことです。作曲家もそして我々も知らない間に「吸収」していて、それが、作曲や演奏にふと現れます。今年の課題曲なら田中カレンさんの「戯れる春の光」を聴いてみてください。初めて聴く曲でしたが、この曲の左手は以前課題曲になった同じ田中カレンさんの「きりん」と同じパターンですよね。これを知れば「きりん」の見え方、聴こえ方も変わるでしょう。影響関係は過去の音楽からだけでなく、新しい曲が以前の曲に影響を与えることもあるわけです。

さまざまな経験を重ねていけば、200年前も今も、音楽は一つの大きな流れの中にある、というような感覚を強く持つことができますね。

上田泰史先生(音楽学者)

例年行われているコンペは、文字どおり「競争」です。でもそれが「チャレンジ」になって、すこし心のくつろぎが生まれたのでは?そんな心の「あそび」に、『ピアノ曲事典』を滑り込ませてみてください。

 私は『ピアノ曲事典』の読者ですが、「書き手」でもあります。「事典」というと、知識をため込む場所とお考えの方もおられるでしょう。たしかに、事典には「知識の貯蔵庫」としての側面もありますが、その知識に生命を吹き込むのは、読者のみなさんです。

情報を覚えたりするのは単なる「勉強」で、学びのいち部分にすぎません。学びとは、もっと実感に根ざした「あそび」に近いものです。たとえば、自分で課題曲にまつわるクイズをつくってみるというのは、とてもよい学びの方法です。アメリカ民謡「ドナルドおじさん」のもとの曲はどんな歌?「フレール・ジャック」の「ジャック」ってだれ?ハチャトゥリアンの「小さな歌」によく似たショパンの前奏曲は?そして、友達と、生徒と、先生と、クイズをシェアしてみましょう。答えが分かっている必要はありません。

『ピアノ曲事典』も、全ての問いには答えられないでしょう。でも、誰かが作った答えを「知っている」ことよりも、みずから上手に問いを立て、答えを探しに行けることのほうが、きっと人生を豊かにするはずです。ぜひ、チャレンジしてみてください!

◆ピティナ・ピアノ曲事典編集長挨拶

ゴールデンウィークが明けてもStay at homeは続きます。気候が良い季節なのに外へ行けないと考えると辛いですが、ピアノを弾ける時間が増えている人は多いと思います。 そんななか、5月1日からエントリーが始まった課題曲チャレンジに合わせ、ピアノ曲事典に解説文や動画などをたくさん載せましたので、ご紹介します。

クラシック音楽は「再現芸術」と言われることがありますが、200年前の曲を演奏したとしても、当然のことながらそれはそのままの再現ではありません。今の世相や演奏者のオリジナリティを反映して、鳴り響くとともに生まれる現代の音楽でもあります。

別の言い方をするなら、作曲された時点でその曲が完成するわけではありません。演奏され、それが聴かれて、また新しいアイデアが生まれて・・・音楽は生き物のように、常に変化し続けます。ピアノ曲事典は多種多様な音楽の姿をとらえることを、狙いとしてきました。そして今、この状況だからこそ生まれる音楽もあるはずです。2020年、オリンピックが延期となった年。課題曲チャレンジを通じて音楽を生み出す皆様を、応援します。

(ピティナ・ピアノ曲事典編集長) 課題曲チャレンジ 詳細 トピックスTOP